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【薬剤師が解説】グレープフルーツジュースと薬の「危険な関係」~知らないと怖い相互作用とその対策~

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「薬は水かぬるま湯で」とよく言われますが、その理由を深く考えたことはありますか?

実は、普段何気なく口にしている飲み物の中には、薬の効果を弱めたり、逆に強めすぎたりして、体に悪影響を及ぼすものがあります。

その代表格が、グレープフルーツジュースです。

爽やかな酸味とほのかな苦味が人気のグレープフルーツジュースですが、特定の薬と一緒に摂取すると、思わぬ副作用を引き起こす可能性があることが知られています。

「たかがジュースでしょ?」と侮ってはいけません。

場合によっては、命に関わる重篤な状態を引き起こすことさえあるのです。

今回の記事では、薬剤師の視点から、なぜグレープフルーツジュースが薬に影響を与えるのか、どんな薬が影響を受けやすいのか、そしてどのように対策すれば良いのかを、詳しく解説していきます。

ご自身やご家族が薬を服用している方は、ぜひ最後までお読みいただき、日々の服薬管理にお役立てください。

なぜ?グレープフルーツジュースが薬の効き目を変えるメカニズム

グレープフルーツジュースが薬に影響を与える主な理由は、「薬物代謝酵素」の働きを阻害してしまうからです。

私たちの体には、口から入った薬を分解・代謝し、体外へ排泄しやすくするための酵素が存在します。

その中でも特に重要なのが、主に小腸や肝臓に存在する「CYP3A4(シトクロームP450 3A4)」という酵素です。

多くの薬が、このCYP3A4によって代謝(分解)されることで、適切な時間、適切な濃度で効果を発揮し、やがて体からなくなっていきます。

ところが、グレープフルーツジュースに含まれる特定の成分(主にフラノクマリン類と呼ばれる化合物群)が、このCYP3A4の働きを強力に阻害してしまうのです。

CYP3A4が阻害されるとどうなる?

CYP3A4の働きが弱まると、薬が体内で十分に代謝されず、結果として薬の成分が体内に長時間とどまり、血中濃度が異常に高くなってしまうことがあります。

例えるなら、蛇口から出る水の量を調節するはずの栓が壊れてしまい、水が出しっぱなしになるような状態です。

薬の効果が必要以上に強く現れ、予期せぬ副作用が出やすくなったり、副作用の程度が重篤になったりする危険性があるのです。

影響はいつまで続く?

グレープフルーツジュースによるCYP3A4の阻害作用は、一度起こると比較的長く続くことが特徴です。

ジュースを飲んでから数時間後が最も影響が強いとされていますが、完全に影響がなくなるまでには2~3日、場合によってはそれ以上かかることもあります。

つまり、「薬を飲む直前にグレープフルーツジュースを飲まなければ大丈夫」というわけではないのです。

薬を服用している期間中は、グレープフルーツジュースの摂取を控えるのが最も安全と言えます。

要注意!グレープフルーツジュースの影響を受けやすい薬の代表例

では、具体的にどのような薬がグレープフルーツジュースの影響を受けやすいのでしょうか?

ここでは、代表的な薬の種類と、主な副作用の例をいくつかご紹介します。

(重要)以下に挙げるのはあくまで一部の例です。ご自身が服用している薬が該当するかどうかは、必ず医師や薬剤師にご確認ください。

薬の種類主な薬の例(一般名)グレープフルーツジュースとの併用で起こりうる主な副作用・症状
カルシウム拮抗薬(高血圧治療薬など)アゼルニジピン
シルニジピン
ニフェジピン
アムロジピン
ベラパミル など
・血圧が下がりすぎる(めまい、ふらつき、失神)
・頭痛
・顔のほてり
・動悸
・歯肉肥厚 など
高脂血症治療薬(スタチン系)シンバスタチン
アトルバスタチン など
・筋肉痛
・脱力感
・筋肉のひきつり
・褐色尿(横紋筋融解症のリスク)
・肝機能障害 など
免疫抑制薬シクロスポリン
タクロリムス
エベロリムス
シロリムス など
・腎機能障害
・肝機能障害
・高血圧
・感染症にかかりやすくなる、神経毒性(ふるえ、頭痛) など
睡眠導入薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など)トリアゾラム
ブロチゾラム
ミダゾラム
ジアゼパム
アルプラゾラム など
・眠気
・ふらつき
・意識障害
・呼吸抑制
・ろれつが回らない
・記憶障害 など
抗血小板薬シロスタゾール
クロピドグレル(一部影響の可能性あり) など
・出血傾向(鼻血、歯ぐきの出血、皮下出血、血尿など)
・動悸
・頭痛 など
抗不整脈薬アミオダロン
キニジン
ベプリジル など
・不整脈の悪化
・めまい
・吐き気
・肝機能障害 など
抗精神病薬クエチアピン
ルラシドン
ピモジド など
・眠気めまい起立性低血圧
・錐体外路症状(手の震え、体のこわばり) など
抗がん剤クリゾチニブダサチニブ
エルロチニブ
パゾパニブ
ベネトクラクス など
・副作用の増強(薬により異なるが、骨髄抑制、消化器症状、肝機能障害 など)
その他オキシコドン(鎮痛薬)
カルバマゼピン(抗てんかん薬)
シルデナフィル(勃起不全治療薬)
コルヒチン(痛風治療薬)
など
・各薬剤の副作用が増強される

特に注意が必要なのは、治療域(効果が出る濃度)と中毒域(副作用が出る濃度)が近い薬です。

これらの薬は、血中濃度が少し上昇しただけでも、重篤な副作用につながる可能性があります。

例えば、カルシウム拮抗薬は血圧を下げる薬ですが、グレープフルーツジュースによって効きすぎると、血圧が過度に低下し、めまいや失神を引き起こすことがあります。

高齢者では転倒のリスクも高まります。

また、スタチン系の高脂血症治療薬では、筋肉が壊れてしまう「横紋筋融解症」という重篤な副作用のリスクが上昇します。

グレープフルーツだけじゃない?注意すべき他の柑橘類

グレープフルーツジュースが薬に影響を与える原因物質はフラノクマリン類であると述べましたが、このフラノクマリン類はグレープフルーツ特有のものではありません。

以下の柑橘類も、フラノクマリン類を含んでいるため、同様の注意が必要です。

ブンタン(ザボン)

スウィーティー(オロブランコ)

ダイダイ(サワーオレンジ)

ハっさく(少量であれば影響は少ないとされる場合もありますが、個人差や品種差があります)

夏みかん(同上)

一方、温州みかん、オレンジ(ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジなど)、レモン、ライム、カボス、スダチなどは、フラノクマリン類の含有量が少ないか、ほとんど含まれていないため、薬との相互作用は起こりにくいとされています。

ただし、品種改良によって新しい柑橘類も登場しています。

また、加工品(ジャム、マーマレード、サプリメントなど)に含まれる柑橘の種類や濃度が不明な場合もあります。

心配な場合は、やはり医師や薬剤師に確認するのが最も確実です。

どのくらいの量や頻度で影響が出るの?

「コップ1杯くらいなら大丈夫だろう」と思うかもしれませんが、グレープフルーツジュースの場合、コップ1杯(約200mL程度)でも薬の代謝に影響を与えることが報告されています。

また、毎日グレープフルーツジュースを飲む習慣がある人は、CYP3A4の阻害が持続的に起こっている状態になるため、特に注意が必要です。

影響の出方には個人差も大きいです。

体質や肝臓・腎臓の機能、他に服用している薬の種類などによって、同じ量のグレープフルーツジュースを飲んでも、影響の度合いは異なります。

薬を飲んでいる場合の対処法と注意点

では、薬を服用中にグレープフルーツジュースとの相互作用を避けるためには、具体的にどうすれば良いのでしょうか?

(1)医師・薬剤師に必ず相談する

最も重要なことは、自己判断せずに、必ず医師や薬剤師に相談することです。

  • 現在服用している薬がグレープフルーツジュースの影響を受けるかどうか。
  • もし影響を受ける場合、どの程度のリスクがあるのか。
  • 代替できる薬があるのか、あるいはグレープフルーツ(関連する柑橘類を含む)の摂取を完全に避けるべきなのか。

これらの点について、専門家のアドバイスを仰ぎましょう。

特に、新しく薬が処方された際や、市販薬を購入する際には、グレープフルーツジュースを飲む習慣があるかどうかを伝えることが大切です。

(2)「お薬手帳」を活用する

複数の医療機関を受診している場合や、薬局が異なる場合でも、服用している薬の情報を正確に伝えるために「お薬手帳」は非常に有効です。

お薬手帳には、グレープフルーツジュースとの相互作用に関する注意喚起が記載されている場合もあります。

(3)薬の説明書(添付文書・患者向け医薬品ガイド)を確認する

処方された薬や市販薬には、必ず説明書(添付文書や患者向け医薬品ガイド)がついています。

そこには、飲み合わせに関する注意点も記載されています。

「グレープフルーツ」というキーワードで確認してみましょう。

ただし、専門的な内容で分かりにくい場合もあるため、やはり薬剤師に説明を求めるのが確実です。

(4) グレープフルーツ(関連柑橘類)の摂取を避ける

影響を受ける薬を服用している場合、最も確実な対策は、グレープフルーツおよび関連する柑橘類の摂取を完全に避けることです。

ジュースだけでなく、果物そのもの、ジャムやマーマレード、ゼリー、サプリメントなどの加工品も同様です。

(5) 時間をずらしてもダメなことが多い

「薬を飲む時間と、グレープフルーツジュースを飲む時間をずらせば大丈夫?」という質問をよく受けます。

しかし、前述の通り、グレープフルーツジュースによる薬物代謝酵素への影響は数日間持続することがあります。

そのため、数時間程度ずらしただけでは、相互作用を避けることは難しい場合が多いです。

影響を受けやすい薬を服用している間は、摂取を控えるのが原則と考えてください。

(6) 自己判断で薬の量を変えたり、中止したりしない

「グレープフルーツジュースを飲んでしまったから、薬の量を減らそう」あるいは「薬を飲むのをやめよう」といった自己判断は非常に危険です。

薬の効果が不足したり、逆に予期せぬ症状が出たりする可能性があります。

必ず医師や薬剤師に連絡し、指示を仰いでください。

こちらの記事も参考にしてください!

【NG行為】薬の効果を高めるためにわざと飲むのは絶対にダメ!

ごく稀に、「薬の効き目を高めたいから、あえてグレープフルーツジュースと一緒に飲んでいる」という方がいますが、これは絶対にやってはいけない危険な行為です。

薬の血中濃度が必要以上に高まると、効果が強まるのではなく、重篤な副作用が現れるリスクが格段に高まります。

治療効果のコントロールも非常に難しくなり、予期せぬ健康被害を招くだけです。

医師は、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、最適な薬の種類と量を慎重に決定しています。

自己判断で薬の効き方を変えようとする行為は、百害あって一利なしです。

まとめ:正しい知識で安全な薬物治療を

グレープフルーツジュースと薬の相互作用は、意外と知られていないかもしれませんが、薬物治療の安全性に関わる非常に重要な問題です。

  • グレープフルーツジュースは、薬物代謝酵素「CYP3A4」を阻害することで、一部の薬の血中濃度を上昇させ、副作用のリスクを高める。
  • 影響を受けやすい薬には、降圧薬、高脂血症治療薬、免疫抑制薬、睡眠薬など様々な種類がある。
  • 影響はコップ1杯程度でも起こり得り、数日間持続することがある。
  • ブンタン、スウィーティー、ダイダイなども同様の注意が必要。
  • 薬を服用中の場合は、自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談し、指示に従うこと。

薬は、正しく使ってこそ、その効果を最大限に発揮し、私たちの健康を守ってくれます。

食べ物や飲み物との相互作用にも気を配り、疑問や不安な点があれば、遠慮なくかかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。

この記事が、皆さまの安全で効果的な薬物治療の一助となれば幸いです。

【免責事項】
本記事は、グレープフルーツジュースと薬の相互作用に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。
個別の薬に関する具体的なアドバイスは、必ず医師または薬剤師にご相談ください。
本記事の情報に基づいて行われた行為において発生したいかなる不利益に対しても、当方は一切の責任を負いかねます。

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