使用期限切れの薬は使える?飲んだらどうなる?薬剤師が解説

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使用期限切れの薬は使える?飲んだらどうなる?薬剤師が解説

「あ、頭が痛い…!そうだ、前に病院でもらった薬が残ってたはず!」

救急箱をゴソゴソ…見つけた!

でも、よく見ると日付が…。

薬の使用期限切れ、これって使えるの?

「ちょっとくらい大丈夫かな」なんて、思わず手が伸びそうになりますよね。

その気持ち、痛いほど分かります。

でも、その一口が思わぬ事態を招くかも…

この記事では、「期限切れの薬を飲んだらどうなる?」という恐怖の疑問に、薬剤師が真正面からお答えします!

【結論】絶対に飲んではダメ!使用期限切れの薬が招くかもしれない3つの悲劇

いきなり結論から申し上げます。

使用期限が切れた薬は、絶対に飲んだり使ったりしないでください!

「もったいない」という気持ちは素晴らしいですが、薬に関してはその考えは非常に危険です。

「大丈夫だろう」という安易な自己判断が、取り返しのつかない悲劇を招く可能性があります。

悲劇①:効かない!ただの粉や錠剤を飲んでいるのと同じに…

使用期限が過ぎると、薬に含まれる有効成分は少しずつ分解され、減っていきます

つまり、期待していた効果が十分に得られない可能性が非常に高いのです。

例えるなら、気の抜けた炭酸飲料のようなもの。

飲んでも体に害はないかもしれませんが、本来のシュワシュワとした爽快感は得られませんよね。

つらい症状を治すために飲んだのに、全く効かずに苦しい時間が長引くだけ…なんて、悲しすぎます。

悲劇②:副作用が牙をむく!成分が変化して予期せぬ症状が…

これが最も恐ろしいリスクです。

薬の成分は、分解される過程で元の成分とは全く別の、体に有害な物質に変化してしまうことがあります

まるで、優しかったヒーローが、時間と共に凶暴なモンスターに変身してしまうようなもの。

実際に、過去には古い抗生物質(テトラサイクリン系)を服用したことで、重い腎臓の障害を引き起こしたという事例も報告されています。

良かれと思って飲んだ薬が、予期せぬアレルギー反応や副作用を引き起こす毒に変わっているとしたら…。

考えただけでもゾッとしますよね。

悲劇③:雑菌の温床に!?特に目薬やシロップは超危険!

薬には、品質を保つための保存料(防腐剤)が含まれていますが、この保存料も時間と共に効果が失われます

特に、水分を多く含む目薬、シロップ剤、粉薬を溶かしたものなどは、保存料の効果が切れると、あっという間に細菌が繁殖する「雑菌の培養地」と化してしまいます。

それを体に入れる行為は、もはや薬を飲むのではなく「雑菌スープ」を飲んでいるのと同じ。

下痢や腹痛ならまだしも、目薬の場合は角膜炎などを引き起こし、最悪の場合、失明に至る危険性すらあるのです。

「腐る」わけじゃない?薬剤師が語る“使用期限”の本当の意味

「でも、見た目は全然変わってないよ?」

そうですよね。

薬は食品のように見た目が腐るわけではないので、大丈夫に思えてしまいます。

しかし、薬の「使用期限」は、食品の「賞味期限」とは全く意味が異なります

使用期限は「品質と効果を100%保証できる期限」です!

薬のパッケージに書かれている使用期限は、「未開封の状態で、適切に保管された場合に、その日付まで有効性(効果)・安全性・品質をメーカーが100%保証しますよ」という、製薬会社からの固い約束の証です。

例えるなら、「この日までは、テストで絶対に100点が取れます!」と保証されているようなもの。

期限を1日でも過ぎてしまうと、そのテストの結果が90点なのか、50点なのか、あるいは体に害を及ぼす0点以下の解答を書いてしまうのか、誰にも保証できなくなります。

それが、薬における使用期限の本当の意味なのです。

未開封でも劣化は進む!薬が置かれている環境の恐怖

薬は非常にデリケートです。

未開封であっても、保管されている環境によって劣化のスピードは大きく変わります

薬の三大天敵は「光」「熱」「湿気」です。

保管場所の例状態薬への影響
夏の車の中高温・多湿・直射日光最悪の環境
期限内でも急速に劣化が進む。
洗面所・キッチン湿気が多い錠剤が湿気を吸って変質したり、カビの原因になる。
窓際の棚直射日光が当たる光によって有効成分が分解されてしまうことがある。
冷暗所(戸棚など)室温で光が当たらない最高の環境
薬が最も安定して品質を保てる。

「とりあえず救急箱に」と保管しているその場所は、本当に薬にとって快適な環境でしょうか?

参照元情報:日本OTC医薬品協会 「薬の正しい保管方法」


関連記事「病院や薬局で処方された薬の保管どうしてる?正しい保管方法と注意点をお話しします!」も合わせてご覧ください!


【薬の種類別】特に危険度が高いのはどれ?危険度ランキング

薬の形状によって、期限が切れた後の危険度は大きく異なります。

【危険度MAX】目薬・シロップ・粉薬(開封後は1ヶ月も持たないことも!)

一度開封したら、使用期限はもはや関係ありません。

  • 目薬
    開封後は雑菌が繁殖しやすいため、原則1ヶ月で使い切ってください。
    たとえ液が残っていても、勇気を持って捨てましょう。
  • シロップ剤、水に溶かした粉薬
    冷蔵庫保管が基本ですが、雑菌やカビが繁殖しやすいため、処方された日数(通常1〜2週間)を過ぎたら処分してください。

【危険度 大】塗り薬・坐薬(変色や分離は危険のサイン)

チューブ入りの軟膏やクリームも、開封後は半年〜1年が目安です。

フタの周りに中身が固まっていたり、変色したり、油分が分離しているように見えたら、危険のサイン。

迷わず捨ててください。

坐薬も、溶けたり変形したりしているものは使用できません。

【危険度 中】錠剤・カプセル(見た目が平気でも油断大敵)

PTPシート(アルミとプラスチックのシート)に入っている錠剤やカプセルは、比較的安定しています。

しかしシートから出して「ピルケース」などに入れた場合は、湿気や光の影響を受けやすくなるため、早めに使い切るのが原則です。

変色していたり、錠剤に斑点ができていたり、湿気てボロボロになっているものは絶対に飲まないでください。

あなたの薬、期限はどこ?「使用期限」のかくれんぼ、見つけ方ガイド

「そもそも、どこに期限が書いてあるの?」

薬の種類によって隠れている場所が違うので、一緒に探してみましょう。

市販薬→箱の側面や底の「EXP」を探せ!

市販薬(OTC医薬品)の多くは、外箱の側面や底面に「使用期限」または「EXP(Expiry Dateの略)」と印字されています。

「EXP 2028.10」とあれば、「2028年10月末まで」が使用期限です。

処方薬:PTPシートの端や、薬袋の印字をチェック!

  • PTPシート:シートの端の方に、製造番号(Lot)が刻印されており、これをもとに使用期限を検索できます。
  • 軟膏チューブ:お尻の圧着部分に刻印されています。
  • 目薬・ボトル入りの薬など:ボトルのラベルや底に印字されています。
  • 薬袋(やくたい):薬局でお渡しする袋に書かれている日付は「調剤年月日」です。(これは使用期限ではないので注意してください!

【絶対ダメ】トイレに流さないで!古い薬の正しい捨て方

期限切れの薬を見つけたら、絶対にトイレや洗面所に流さないでください

環境汚染の原因となります。

最も推奨されるのは、お近くの薬局に持ち込むこと。

多くの薬局では、不要になったお薬の回収を行っています。

ご家庭で処分する場合は、錠剤をシートから出し、中身が分からないように紙などに包んで、可燃ゴミとして捨てるのが一般的です(自治体のルールをご確認ください)。

まとめ 期限切れの薬は「ありがとう」と伝えて正しく処分しよう

使用期限切れの薬は使えるか、その答え、ご理解いただけたでしょうか?

  • 答えは断固として「NO」! 効果がないだけでなく、有害物質に変化したり、雑菌が繁殖している危険があります。
  • 薬の使用期限は「品質と効果を100%保証する約束の期限」です。
  • 特に目薬やシロップは開封後の寿命が非常に短いので要注意!
  • 古い薬は、感謝の気持ちを込めて、薬局に持ち込むか、可燃ゴミとして正しく処分しましょう。

この記事が、あなたの「もったいない」という優しい気持ちを、「自分の体を大切にする」という賢い選択へと導くきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

ご家庭の薬で少しでも不安なものがあれば、いつでも私たち薬剤師に相談してくださいね!