保湿剤ヒルドイドとワセリンの違いは?処方薬の使い分け

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保湿剤ヒルドイドとワセリンの違いは?処方薬の使い分け

「病院で保湿剤もらったけど、これってヒルドイド?」

「ワセリンと何が違うの?」

と、薬局のカウンターでよくご質問をいただきます。

特に【保湿剤 ヒルドイド(ヘパリン類似物質)】は、アトピー性皮膚炎や乾燥肌の治療薬としてだけでなく、その保湿力の高さから美容目的で話題になることもあり、気になっている方が本当に多いですよね。

でも、ちょっと待って!

処方される保湿剤には、ヒルドイドだけでなく、プロペトやワセリンなど色々な種類があるんです。

「保湿剤って、どれも肌に水分を閉じ込めるんでしょ?」

いいえ!

実はそれぞれ全く違う「得意ワザ」を持っているんですよ!

この記事では、あなたのカサカサ肌を救う「保湿剤 ヒルドイド」と、その他の処方薬の「違い」と「賢い使い分け」を、日本一わかりやすく解説します!

あなたのカサカサ肌を救う「相棒」がきっと見つかりますよ!


関連記事「【塗る順番】保湿剤を先に!ステロイドを後に!薬局がすすめる理由」も合わせてご覧ください!


え、同じじゃないの!?「ヒルドイド」と「ワセリン」決定的すぎる違い

まずは、処方薬の保湿剤ツートップであるヒルドイドとワセリンの違いについて、モヤモヤをスッキリさせましょう!

結論から言うと、この二つはどちらも「保湿剤」というカテゴリではありますが、役割が真逆と言ってもいいほど決定的に違います!

項目ヒルドイド(ヘパリン類似物質)ワセリン(プロペト・白色ワセリン)
役割水分を「補給&保持」水分を「閉じ込める」
得意ワザ肌の奥(角質層)に浸透して潤いを与える肌の表面に膜を張って水分蒸発を防ぐ
イメージ水を運ぶ「給水車」水が漏れないようにする「鉄壁のフタ」
保湿効果高い(肌内部の水分量を増やす)高い(外部刺激から守る)
血行促進あり(しもやけや傷跡にも有効)なし(純粋な油分)
抗炎症作用あり(乾燥による炎症を鎮める)なし(炎症には別の薬が必要)
べたつき少ない(ローションタイプもあり)多い(油そのもの)

この表を見ていただけると、「ヒルドイド」と「ワセリン」が、全然違う役割を持っていることがわかりますよね!

ヒルドイド(ヘパリン類似物質)は「水を吸い寄せる天才」!

ヒルドイドの主成分である「ヘパリン類似物質」は、水と仲良しの成分(親水性)をたくさん持っています。

肌に塗ると、角質層にぐんぐん浸透して、周りの水分子をガッチリ引き寄せて離しません!

これを「モイスチャー効果」と言います。

乾燥した肌は、例えるなら「水がカラカラのスポンジ」状態。

ワセリンのような「フタ」だけではダメで、まずはヒルドイドでスポンジに水分をたっぷり吸わせる必要があるんです!

さらに、ヒルドイドには血行促進作用抗炎症作用もあるので、

  • 乾燥で血行が悪くなって起こる「しもやけ」
  • 乾燥からくる「肌の小さな炎症」
    にも効果を発揮してくれる、まさに保湿の王様なんです!

ワセリンは「水蒸気を通さない最強バリア」!

一方でワセリンは、石油から作られた純度の高い油(炭化水素)です。

ワセリン最大の魅力は、肌の表面にピタッと張り付いて、水分の蒸発をほぼ100%防いでくれること!

これを「エモリエント効果」と言います。

ワセリン自体には水分を肌に与える力はありませんが、

  • すでに肌にある水分や、お風呂上がりに肌が含んだ水分を外に逃がさない
  • アレルゲンやチリなどの外部刺激が肌に触れるのを防ぐ

という、最強の守護神として働いてくれます。

特に乾燥がひどい時や、刺激に弱い赤ちゃんの肌を守るのにこれほど頼れるものはありません!

処方保湿剤オールスターズ大集合!あなたの「推し」はどれ?

病院で処方される塗り薬の仲間たちを、もっと詳しく見ていきましょう!

「保湿剤」として処方される薬は、大きく3つのグループに分けられます。

【保湿の王様】ヒルドイド(ヘパリン類似物質)- ぐんぐん潤す「補水」タイプ

ヒルドイドは、処方される保湿剤の中で、最も「治療薬」としての性格が強いお薬です。

有効成分
ヘパリン類似物質

主な作用
保水作用、血行促進作用、抗炎症作用

剤形(種類):軟膏、クリーム、ローション、フォーム(泡)
軟膏:一番油分が多く、保湿力が高い。ベタつきあり。
クリーム:軟膏よりサラッとして塗りやすい。
ローション:伸びが良く、体や髪の毛がある部分に最適。

【知っておきたい豆知識】
ヒルドイドには、様々な会社から出ているジェネリック(後発品)もあります。
これらにはヒルドイドと同じ「ヘパリン類似物質」が同じ量入っていますので、効果は変わりません。
塗り心地や使用感が少しずつ違うので、薬剤師に相談して「お気に入りのテクスチャー」を見つけるのも楽しいですよ!

【最強の守護神】ワセリン・プロペト – 潤いを逃がさない「フタ」タイプ

一方のワセリンやプロペトは、「皮膚保護剤」という位置づけの油性の塗り薬です。

有効成分
白色ワセリン

主な作用
皮膚表面の保護、水分の蒸発を防ぐバリア機能

剤形
軟膏(純粋な油分)

【知っておきたい豆知識】
白色ワセリン:一般的なワセリン。
プロペト:白色ワセリンをさらに精製し、不純物を減らしたもの。赤ちゃんや敏感肌の方にも使いやすいように、より刺激が少なく作られています。
サンホワイト:さらに純度を高めたもので、一部の薬局や市販でも購入できます。

ワセリン系は、アレルギーを起こす成分がほぼ含まれていないため、安全性はピカイチ!

刺激に弱い方・ただれた部分・目元など、どんなところでも安心して「バリア」を張ることができます。

【緊急出動!】ステロイド – あれは保湿剤? 答えは「NO!」です!

薬局で「保湿剤と一緒にもらいました」と出てくることがありますが、ステロイドは、断じて保湿剤ではありません!

有効成分
ステロイドホルモン(例:ロコイド、リンデロンなど)

主な作用
強力な抗炎症作用

役割
皮膚の炎症(赤み、かゆみ、腫れ)を鎮める「消火活動」

ステロイドは、肌が「火事」を起こしている状態(アトピーのひどい炎症、湿疹など)を鎮める「治療薬」です。

炎症が落ち着いた後に、保湿剤で肌を「守り育てる」ことが大切なので、両方が処方されることが多いんです。

衝撃!保湿剤とステロイド、役割は「栄養士」と「消防士」くらい違う

ここで、多くの方が誤解しがちな、保湿剤とステロイドの関係を、もっとわかりやすく例えてみましょう!

保湿剤の本当の仕事  → 「バリア機能」を育てる栄養士!

保湿剤(ヒルドイドやワセリン)の究極の目的は、肌が本来持っている「バリア機能」を健康に育てることです。

乾燥した肌は、レンガを積み重ねたような角質細胞の間に潤いがなく、スカスカの状態。

このため、外部からの刺激が入り放題、水分は逃げ放題で、バリアが壊れてしまっています。

ヒルドイド(給水車): スカスカのレンガに水分と栄養(ヘパリン類似物質)を届けて、バリアを立て直す材料を与えます。
ワセリン(フタ): 立ち直ろうとしているバリアを、外部の敵(乾燥、刺激物)から徹底的に守ります。

保湿剤は、肌を内側から育て、強くするための「栄養士」や「トレーナー」のような存在なんです!

ステロイドの本当の仕事 → 「炎症(火事)」を消す消防士!

一方、ステロイドは、炎症という名の「肌で起きている火事」を素早く消し止めるのが仕事です。

炎症がひどい状態(赤く腫れて、猛烈にかゆい時)は、何をやっても刺激になるため、保湿剤の成分すら肌に入っていけないことがあります。

まずは、ステロイドという強力な「消防士」が出動して、火事を鎮火させることが最優先なんです。

ステロイド: 強力な抗炎症作用で、肌の「過剰な免疫反応」を抑え込み、赤みやかゆみをストップさせます。

火事が鎮まったら、今度は再発しないように、保湿剤という「栄養士」にバトンタッチして、壊れたバリアを修復・強化していくという流れになるわけです。

【もう迷わない!】保湿剤・ワセリン・ステロイドの役割比較

種類主な作用得意なこと塗るべきタイミング
ヒルドイド保湿・血行促進・抗炎症乾燥肌の根本治療毎日
入浴後や乾燥を感じた時
ワセリン/プロペト皮膚の保護刺激から肌を守りたい時、目元など敏感な部位毎日
特にヒルドイドの上から
ステロイド強力な抗炎症作用赤み・腫れ・強いかゆみがある湿疹症状がある時だけ
医師の指示に従って

薬局スタッフがこっそり教える!最強の「使い分け」テクニック

さて、ここからが本番!

処方薬をもらったはいいけど、「これ、どの順番で、どう使えばいいの?」という疑問にバッチリお答えします!

場面①:カサカサで粉を吹く…そんな時は?

【症状】

赤みやヒリヒリはないが、白い粉を吹いて、皮膚がゴワゴワしている(=単純な乾燥肌、皮脂欠乏症)。

【正解の使い分け】

  1. お風呂上がりすぐに、ヒルドイドをたっぷりと塗る。(肌に水分があるうちに「給水車」を!)
  2. 乾燥がひどい部分や特に刺激から守りたい部分(手足など)に、ワセリン・プロペトを薄く上から塗る。(潤いを逃がさないように「フタ」を!)

この場合は、ヒルドイドが主役です。

肌に水分を補い、血行も良くして、肌の機能そのものを改善させてあげましょう。

ワセリンは、その効果を最大限に持続させるための「プラスワン」として使います。

場面②:赤くてヒリヒリ!かゆい!そんな時は?

【症状】

乾燥しているだけでなく、強い赤み、腫れ、ひどいかゆみがある。(=湿疹、アトピー性皮膚炎の悪化など)

【正解の使い分け】

  1. ステロイド軟膏を、赤み・かゆみのある患部だけに塗る。(「消防士」で火事を鎮火!)
  2. ステロイドが乾くのを少し待ってから、患部も含めた周りの乾燥部分全体にヒルドイドを塗る。(鎮火した火事の後の「修復作業」!)

この場面では、ステロイドが主役です。

炎症を放置すると、肌のバリア破壊が進んで悪循環に陥ります。

まずは炎症を鎮めることが最優先!

ステロイドは、炎症がある時だけ使い、赤みが引いたらヒルドイドやワセリンの保湿ケアに切り替えていくのが基本です。

【塗る順番、どっちが先?】
ステロイドと保湿剤を同じ場所に塗る場合、塗る面積の広い保湿剤を先に塗る方が良いとする意見と、ステロイドを先に患部に塗ってから、保湿剤を周りに塗る方が良いとする意見があります。

薬局のおすすめは? → 先にステロイドを患部だけに塗ること。

なぜなら、先に保湿剤を塗ると、ステロイドが塗り広げられてしまい、塗る必要のない健康な部分にまでステロイドがついてしまうのを防ぐためです。(参照元:シオノギヘルスケア/日本皮膚科学会Q&Aなど)

場面③:最強コンボ!「ヒルドイド+ワセリン」の重ね塗り術

乾燥を徹底的に阻止したいなら、「ヒルドイド(給水)→ ワセリン(フタ)」のコンボが最強です!

【塗り方】
1. ヒルドイドを、手のひらで温めながら、乾燥部分全体にたっぷり(テカるくらい)塗ります。
2. 5分ほど待って、ヒルドイドが肌に馴染むのを待ちます。
3. ワセリン(プロペト)をごく少量、指先に取り、乾燥がひどい部分(膝、肘、かかと、口元など)に優しくフタをするように重ねて塗ります。

この塗り方をマスターすれば、一晩中、肌内部の潤いを守り抜くことができますよ!

よくあるギモン!ヒルドイドって美容液代わりに使っていいの?

【結論】

美容目的での使用は、保険診療の対象外です。

数年前、その高い保湿力から、ヒルドイドが「究極のアンチエイジングクリーム」として話題になり、多量に処方を受けようとする方が増えました。

これに対し、厚生労働省と皮膚科学会から「美容目的での安易な処方は保険適用外」という通達が出されています。

【なぜダメなの? 薬局のホンネ】

1.健康保険制度を守るため
ヒルドイドは、乾燥肌やアトピー性皮膚炎といった病気の治療薬として、保険が適用されています。
美容目的で大量に処方されると、医療費が増大し、本当に必要な患者さんへの医療が圧迫されてしまうためです。

2.副作用のリスク
どんな薬にも副作用はあります。
ヒルドイドも、血行促進作用があるため、塗りすぎると肌が赤くなったり、人によってはニキビができやすくなったりする可能性があります。
医師の指導なしに、自己判断で健康な肌に大量に使い続けるのは、リスクを伴います。

【薬局からのアドバイス】
ヒルドイドの成分「ヘパリン類似物質」は、ドラッグストアで買える市販薬(例:ヒルマイルド、アットノンなど)にも配合されています。
もし美容目的やちょっとした乾燥に使いたい場合は、保険の効かない市販薬(ヘパリン類似物質配合の製品)を利用するのが、賢く安全な方法ですよ!

まとめ もう迷わない!自分にピッタリの保湿剤で、うるおい肌を育てよう

今回は、【ヒルドイド】と、その他の保湿剤(ワセリン、ステロイド)の決定的な違いと、それぞれの賢い使い分けについて熱弁しました!

  • ヒルドイド(ヘパリン類似物質): 肌に水分を「補給&保持」する給水車。乾燥肌の治療の主役です。
  • ワセリン(プロペト): 肌の表面に「フタ」をする最強のバリア。刺激から守りたい時に最適です。
  • ステロイド: 肌の「炎症(火事)」を消し止める消防士。赤みやかゆみがひどい時だけ使います。

これからは、ただ言われるがままに塗るのではなく、「今私の肌は、給水が必要なのか?」「それともバリアが必要なのか?」「それとも火事を消すべきなのか?」と、自分の肌と対話しながら薬を使ってみてください。

もし、「私の肌には、どの【保湿剤 ヒルドイド】タイプが一番合っているの?」と迷ったら、遠慮なく処方箋を持って、私たち調剤薬局のカウンターまでお越しください。

お肌の状態や生活習慣を伺いながら、あなたの「最強の相棒」を見つけるお手伝いをさせていただきます!

正しい知識で、うるおいあふれる、愛され肌を育てていきましょう!