皮膚科でもらった塗り薬。
「保湿剤とステロイド、どっちが先?」
—この疑問は、長年多くの方が抱える永遠のテーマですよね!
「薬を塗る順番なんて、適当でいいや」と思っていませんか?
実は、ちょっとした順番の違いが、薬の効果や、塗り薬の副作用のリスクに影響を与えてしまうことがあるんです。
特に、皮膚科で処方される保湿剤とステロイド外用薬を塗る順番は、多くの方が悩む永遠のテーマ!
この記事では、結論として「保湿剤を先に、ステロイドを後に」という順番を薬局スタッフが推奨する理由を、包み隠さずお伝えします。
関連記事「保湿剤ヒルドイドとワセリンの違いは?処方薬の使い分け」も合わせてご覧ください!
あなたの塗り方はどっち?「順番逆」で起こるかもしれない問題点

皮膚科の先生から、「保湿剤」と「ステロイド」という、役割の違う二種類の塗り薬をもらった時、あなたはどちらから塗っていますか?
| あなたの塗り方 | 起こるかもしれない問題点(リスク) |
| A. ステロイド → 保湿剤の順番 | ステロイドの「意図しない拡散」リスク 先に塗ったステロイドを、後から塗る保湿剤で、患部以外の健康な皮膚にまで塗り広げてしまう可能性があります。 |
| B. 保湿剤 → ステロイドの順番(薬局推奨) | ステロイドの効果が「薄まる」可能性 理論上、先に塗った保湿剤の油分などで、ステロイドの吸収がわずかに妨げられる可能性があります。 |
医学的な研究では、順番によってステロイドが皮膚に浸透する量に大きな差はないという報告もあります。(参照元:マルホ 医療関係者向けサイトなど)
しかし、私たち薬局スタッフが現場で最も懸念しているのは、Aの「ステロイドの意図しない拡散」です。
ステロイドは炎症を鎮める強力な薬ですが、塗る必要のない健康な部分に長期間塗り続けると、皮膚が薄くなったり、毛細血管が拡張して赤ら顔になったり、ニキビができやすくなったりといった副作用(局所性副作用)のリスクが高まります。(参照元:シオノギヘルスケア、九州大学皮膚科Q&Aなど)
だからこそ私たちは、この「リスクを最小限に抑える塗り方」を、心からおすすめしたいのです!
薬局が推す「保湿剤 → ステロイド」の順番が最強なワケ

長年の経験と患者様への「愛」から、調剤薬局スタッフが強く推奨するのがこの順番です!
ステロイドをピンポイントで患部だけに届ける「狙い撃ち作戦」!
「保湿剤を先に、ステロイドを後に」の順番には、こんなに嬉しいメリットがあるんです。
1. ステロイドの「塗りすぎ・広げすぎ」を徹底的に防ぐ
これが最大のメリットです!
広範囲に塗る保湿剤を先に塗り、ステロイドを塗る塗ることで、「赤みがある、かゆみが強い患部だけ」にピンポイントでステロイドを置くことができます。
もしステロイドを先に塗ってしまうと、保湿剤を塗る際、治っている部分や健康な部分にまで意図せず指についたステロイド成分が広がってしまうリスクが高まります。
2. スキンケアのルーティンが確立しやすい
保湿剤(ヒルドイド、ワセリンなど)は、肌を健康に保つために毎日、広い範囲にたっぷり塗る必要があります。
この「日常のスキンケア」をまず先に行うことで、「炎症が出たらステロイドを追加で塗る」という、特別な治療と「毎日の習慣」を切り分けやすくなります。
この順番は、「健康な肌には保湿剤でバリアを!」「トラブル肌にはステロイドで治療を!」という、役割分担を明確にする、最も安全で効果的な方法だと私たちは考えます!
なぜ皮膚科医は「どちらでも良い」と言うのか?その背景を解説
先ほど述べたように、多くの皮膚科医は「どちらの順番でも、最終的な効果に大きな差はない」と指導することが多いです。
これは、薬の「吸収率」だけを考えた場合、どちらが先でも大きな違いがないためです。
しかし、なぜ専門家はそう言いながらも、私たち薬局スタッフが「保湿剤 → ステロイド」を推すかというと、以下の理由があるからです。
- 患者さんの心理的負担軽減
「ステロイドを先に塗って、広げたらどうしよう」という不安を取り除き、安心して薬を使ってもらいたいからです。
- 実用性の高さ
広範囲に塗る保湿剤を先に済ませた方が、後のステロイドの「狙い撃ち」が簡単で、塗り忘れや塗りムラも防ぎやすいという実用上のメリットが大きいのです。
皮膚科医と薬局、どちらも患者さんの肌を治したいという思いは一緒!
現場の経験から、私たちはこの順番を「最もミスが少なく、安全に治療を進められる方法」として推奨しています。
順番論争はもう終わり!「役割」と「量」が解決への鍵

塗る順番にこだわりすぎるよりも、ずっとずっと大切なことがあります。
それは、それぞれの薬の「役割」と「適切な量」を理解することです!
役割復習:ステロイドは炎症、保湿剤はバリア!
| 薬の種類 | 役割 | 塗る範囲 | 塗る期間 |
| ステロイド | 【攻め】 炎症を鎮める「消防士」 | 赤み、かゆみのある患部のみ | 医師の指示期間のみ(治ればストップ) |
| 保湿剤 | 【守り】 バリア機能を育てる「栄養士」 | 全身、または乾燥が気になる広範囲 | 毎日、長期間(寛解後も) |
この役割を理解していれば、塗る順番が逆になったとしても、「ステロイドは、患部から絶対にはみ出さないようにしよう!」という強い意識が生まれます。
これが、何よりも大切なことなんです。
【塗り薬の適量】 保湿剤はたっぷりが命!ステロイドは薄くてもOK?
薬の効果を最大限に引き出すには、「適量」を塗ることが絶対に欠かせません!
特に保湿剤は「たくさん塗る=効果アップ」に直結します。
塗り薬の適量を測る目安として、医療現場では「FTU(フィンガーチップユニット)」という単位を使います。
FTU(フィンガーチップユニット)の目安
| 薬の剤形 | 1 FTUの量 | 塗れる面積の目安 |
| 軟膏・クリーム | 大人の人差し指の先から第一関節までの長さ | 大人の手のひら2枚分 |
| ローション | 1円玉大の量 | 大人の手のひら2枚分 |
【保湿剤】は「テカるくらい」が正解!
保湿剤は、このFTUを基準に、肌に塗った後ティッシュが貼りつく程度、または表面がテカって見えるくらいの量を塗るのが正解です。
特に乾燥がひどいアトピー性皮膚炎の方などは、惜しみなくたっぷり塗りましょう。
「多すぎかな?」と思うくらいでちょうどいいことが多いです。
【ステロイド】は薄くても効く? → 必要な量をしっかり!
ステロイドも、基本はFTUを目安に必要な量を塗ります。
「ステロイドだから怖い」と、自己判断で極端に薄く塗りすぎるのはNGです!
薄すぎると効果が十分に発揮されず、症状が長引き、かえってステロイドを長く使うことになってしまうからです。
大切なのは、「量を減らす」ことではなく、「塗る範囲を患部だけに限定すること」です。
塗り方の工夫で効果アップ!テクスチャー別「正しい塗り方」

薬を塗る時、「順番」と同じくらい、「塗り方」も重要なんです!
摩擦による刺激は、せっかく治りかけている肌のバリアを壊してしまいます。
軟膏タイプ : 練りこんで塗る? → 答えはNO!
正しい塗り方
軟膏は油分が多く硬いので、ついつい力いっぱい「練りこんで」しまいがちですが、これはNG!
患部に「ちょんちょん」と数カ所に薬を置く。
手のひらや指の腹を使い、優しく広げ、肌の表面に「膜を張る」イメージで、滑らせるように伸ばす。
擦り込む必要はありません!
コツ : 塗る前に、手のひらで薬を少し温めると、伸びが良くなり、摩擦を減らせますよ。
クリーム・ローションタイプ:摩擦は絶対NG!優しくが基本
正しい塗り方
クリームやローションは伸びが良い分、ついつい広い範囲を「サーッ」とこすってしまいがち。
軟膏と同じく、患部全体に薬を置いてから、手のひら全体を使って優しく包み込むように広げます。
「マッサージはしない!」のが鉄則です。
コツ : お風呂上がりなど、肌が温まっていて潤っている時に塗ると、浸透(※角質層まで)が良くなります。
薬を塗る時に「やってはいけない」3つのNG習慣

長年塗り薬を使っている人でも、無意識にやってしまいがちなNG習慣をご紹介します。
NG1:手についた薬をティッシュで拭き取る
ステロイドを塗った後、「手に残った薬を拭き取ってから保湿剤を塗ろう」とティッシュで拭き取っていませんか?
ティッシュなどで拭き取ると、指のシワに入り込んだ成分が残ってしまい、その後保湿剤を塗った時に、結局ステロイドが健康な部分に広がる原因になる可能性があります。
【正しい対処法】
・ ステロイドを塗り終えたら、すぐに手を洗いましょう。
NG2:塗る時に強くこすりすぎる
これは先述しましたが、本当に重要なのでもう一度!
「薬を肌の奥まで浸透させたい!」という気持ちから、ゴシゴシと擦り込んでしまうのは逆効果です。
肌への摩擦は、せっかく頑張って回復しようとしているバリア機能を再び破壊し、炎症を悪化させる原因になります。
優しく、優しく、「肌が喜ぶ塗り方」を心がけてください。
NG3:症状が良くなったらすぐに塗るのをやめる
「赤みが引いたから、ステロイドはもう終わり!」と、自己判断で急に薬を中断するのはNG習慣の最たるものです。
見た目の赤みが消えても、皮膚の内部ではまだ炎症の「火種」が残っていることが非常に多いんです。
ここで薬を急にやめてしまうと、高確率で症状がぶり返してしまいます(リバウンド)。
【大切なこと】
症状が良くなっても、医師の指示があるまでは薬を続けましょう。
ステロイドは徐々に弱いものに切り替えたり、塗る回数を減らしたりして、医師の管理のもとで卒業していくのが鉄則です。
まとめ 【保湿剤 ステロイド 順番】の最適解を知って、美肌生活を楽しもう!

今回の記事では、長年の疑問であった「保湿剤とステロイドを塗る順番」について、徹底的に解説しました。
- 最適解は「保湿剤 → ステロイド」!(広い範囲 → 狭い範囲)
- 最大の理由は、ステロイドの「意図しない拡散」を防ぐため!
- 順番よりも大切なのは、薬の「役割」と「適切な量」!
今日から、この知識をあなたのスキンケアに取り入れて「役割」を意識し、「適量」を「優しく」塗ることを実践してみてください。
きっと、あなたの肌はもっと早く元気になってくれるはずです。
塗り薬の使い方で迷ったり、不安に感じたりした時は、いつでも私たち調剤薬局の薬剤師にご相談ください。あなたの美肌生活を、心から応援しています!
【情報参照元・引用元】
- シオノギヘルスケア:ステロイド外用剤(塗り薬)に関する情報
- マルホ株式会社:皮膚外用剤の基礎知識(医療関係者向け情報)
- 日本皮膚科学会:皮膚科Q&A
- 厚生労働省:医療保険適用に関する情報
- 九州大学皮膚科:ステロイド外用療法 一般向けQ&A
- 各医薬品の添付文書、および臨床研究報告(FTUに関する報告など)