「このサプリ、今飲んでる薬と一緒に飲んで大丈夫かな…?」
ふと、そんな不安がよぎったことはありませんか?
良かれと思って飲んでいるサプリメントが、もし薬の効果を弱めたり、逆に強めて体に悪影響を及ぼしたりする「危険な関係」だったら…
考えただけでも怖いですよね。
この記事では、サプリメントと薬の飲み合わせについて、絶対に知っておいてほしいNGな組み合わせを、薬剤師が徹底解説します。
「知らなかった」では済まされない、あなたとあなたの大切な家族の健康を守るための、大切なお話です。
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なぜダメなの?薬とサプリが「ケンカ」する2つの理由

「そもそも、なんで食品であるサプリが薬の邪魔をするの?」
その秘密は、薬が体の中を旅する過程にあります。
薬とサプリの「ケンカ」の仕方は、主に2パターンです。
パターン1:薬の「吸収・分解」を邪魔する!
薬は、体の中にある「CYP(シップ)」という酵素などで分解(代謝)され、体外へ排出されます。
しかし、一部のサプリ成分は、このCYPの働きを邪魔してしまうことがあります。
例えるなら、薬が通るべきトンネルの出口にフタをしてしまうようなもの。
薬がうまく排出されず体内に長く留まることで、効果が強く出すぎたり、副作用のリスクが爆上がりしたりするのです。
パターン2:薬の「作用」そのものを強めたり、弱めたりする!
薬とサプリが、体の中で同じような働き(作用)や、正反対の働きをすることがあります。
これは、アクセルとブレーキを同時に踏んでしまったり、逆にアクセルを2倍の力で踏み込んでしまうようなもの。
薬の効果が弱まって病気が悪化したり、効果が強まりすぎて危険な状態に陥ることがあります。
【薬剤師が警鐘】特に注意!処方薬との危険な飲み合わせ【完全版リスト】

毎日飲むことが多い処方薬だからこそ、飲み合わせには細心の注意が必要です。
ここでは特に危険性が高い、あるいは頻繁に相談を受ける組み合わせを、薬のジャンル別に徹底解説します。
あなたの飲んでいる薬がないか、必ずチェックしてください。
【最重要注意喚起】ハーブの王様?いいえ、「薬とのケンカの王様」です!

リストの前に、まずこのハーブについてお伝えしなければなりません。
それは「セントジョーンズワート」(和名:セイヨウオトギリソウ)です。
気分が落ち込む時などに良いとされる人気のハーブですが、実は多くの薬と「ケンカ」する、薬剤師にとっては要注意リストの筆頭です。
その理由は、セントジョーンズワートが、肝臓にある薬を分解するための酵素(CYP3A4など)を異常に活性化させてしまうからです。
例えるなら、薬が体内で仕事をする前に、超高速のベルトコンベアに乗せて、どんどん体外に放り出してしまうようなもの。
結果として、多くの薬の効果が弱まってしまいます。
これからご紹介するリストにも頻繁に登場しますが、それだけ影響範囲が広いと覚えておいてください。
① 血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)
心筋梗塞や脳梗塞の予防のために、非常に重要なお薬です。
| 薬の例 | ワーファリン、バイアスピリン、クロピドグレル、リクシアナ、イグザレルトなど |
| NGサプリ | ビタミンK(クロレラ、青汁)、セントジョーンズワート、イチョウ葉エキス、EPA・DHA、ビタミンE |
| なぜ危険? | ● ビタミンK:ワーファリンの効果を打ち消し、血栓ができるリスクが高まります。 (納豆を食べてはいけないと言われるのと同じ理由です) ● ビタミンK以外:セントジョーンズワートやイチョウ葉エキス、EPAなどは、抗凝固薬や抗血小板薬の効果を強めてしまい、出血が止まらなくなるリスクを高めてしまいます。 |
② 血圧の薬(降圧薬)
毎日飲むことで、脳卒中や心臓病のリスクを管理する大切なお薬です。
| 薬の例 | カルシウム拮抗薬(アムロジピン等)、ARB・ACE阻害薬など |
| NGサプリ | セントジョーンズワート、カリウム、カルシウム、甘草(グリチルリチン) |
| なぜ危険? | ● セントジョーンズワート:一部の血圧の薬の分解を早め、効果を弱めてしまうことがあります。 ● カリウム:一部の血圧の薬と併用すると、血中のカリウム濃度が高くなりすぎて不整脈などを引き起こす危険があります。 ● 甘草:漢方薬や食品にも含まれる成分。摂りすぎると「偽アルドステロン症」という副作用で血圧が上がってしまい、薬の効果を邪魔します。 |
③ 糖尿病・脂質異常症の薬
生活習慣病のコントロールに欠かせないお薬です。
| 薬の例 | 糖尿病治療薬全般、脂質異常症治療薬(スタチン系)など |
| NGサプリ | 紅麹(べにこうじ)、食物繊維(グルコマンナン等)、クロミウム、CoQ10 |
| なぜ危険? | ● 紅麹:一部の脂質異常症治療薬と同じ系統の成分が含まれており、併用すると副作用(筋肉の痛みや肝機能障害など)のリスクが急上昇します。 ● 食物繊維:糖の吸収を穏やかにしますが、同時に薬の吸収も妨げ、効果を弱めてしまうことがあります。飲む時間をずらすなどの工夫が必要です。 |
④ ピル・ホルモン剤
避妊や月経困難症、更年期障害などの治療で使われるお薬です。
| 薬の例 | 低用量ピル(経口避妊薬)、ホルモン補充療法(HRT)のお薬 |
| NGサプリ | セントジョーンズワート |
| なぜ危険? | セントジョーンズワートは、ピルに含まれる女性ホルモンの分解を早めてしまいます。その結果、不正出血が起きたり、最も重要な避妊効果が弱まってしまう可能性があります。 これは絶対に避けなければならない相互作用です。 |
⑤ 免疫抑制剤・抗てんかん薬・抗うつ薬
非常にデリケートなコントロールが必要なお薬たちです。
| 薬の例 | 免疫抑制剤(シクロスポリン等)、抗てんかん薬(フェニトイン等)、抗うつ薬(SSRI等) |
| NGサプリ | セントジョーンズワート |
| なぜ危険? | ● 免疫抑制剤:薬の効果が弱まると、移植後の拒絶反応など命に関わる事態に。 ● 抗てんかん薬:薬の効果が弱まると、てんかん発作が再発する危険が。 ● 抗うつ薬:併用すると、脳内のセロトニンという物質が過剰になり、セロトニン症候群(錯乱、発熱、震えなど)を引き起こす恐れがあります。 |
⑥ 骨粗しょう症・甲状腺の薬
特に朝一番の空腹時に飲むことが多い、吸収に工夫が必要なお薬です。
| 薬の例 | 骨粗しょう症の薬(ビスホスホネート製剤)、甲状腺ホルモン薬(チラージンS) |
| NGサプリ | カルシウム、マグネシウム、鉄分 |
| なぜ危険? | これらのミネラル(金属イオン)は、胃や腸の中で薬の成分とがっちり結合し(キレート形成)、体に吸収されない塊を作ってしまいます。 その結果、薬の効果が劇的に失われてしまいます。 これらのサプリを飲む場合は、必ず薬の服用時間から数時間以上あける必要があります。 |
⑦ 睡眠薬・抗不安薬
心の平穏や休息のために使われるお薬です。
| 薬の例 | 睡眠薬、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など) |
| NGサプリ | セントジョーンズワート、バレリアン、カヴァ |
| なぜ危険? | ● セントジョーンズワート:薬の分解を早め、効果を弱めてしまう可能性があります。 ● バレリアン、カヴァ:これらも鎮静作用を持つハーブのため、薬と併用すると眠気やふらつきが強く出すぎてしまい、日中の活動に支障が出たり、転倒の危険性が増したりします。 |
「市販薬なら安心」は間違い!風邪薬や痛み止めとの落とし穴

「病院の薬じゃないから大丈夫でしょ?」は大きな間違いです!
市販薬とサプリにも、知られざる危険な関係があります。
総合感冒薬・鼻炎薬 × セントジョーンズワート
イライラを和らげるハーブとして人気のセントジョーンズワート。
実は、多くの風邪薬や鼻炎薬に含まれる成分の分解を邪魔して、眠気などの副作用を強く出してしまう可能性があります。
痛み止め(NSAIDs)× ビタミンC、鉄分
ロキソニンSやイブなどの痛み止め(NSAIDs)は、胃を荒らす副作用があります。
そこに、酸性のビタミンCや、胃腸への刺激となることがある鉄分のサプリを一緒に飲むと、胃痛や胃もたれのリスクを高めてしまうことがあります。
参照元情報:厚生労働省「セント・ジョーンズ・ワートと医薬品の相互作用について」、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「『健康食品』の安全性・有効性情報」
これって大丈夫?気になる飲み合わせ、薬剤師への「駆け込み」Q&A

Q. 病院の薬とサプリ、飲む時間をずらせば大丈夫?
A. 一概に「大丈夫」とは言えません!
食物繊維のように「吸収」を邪魔するタイプは、時間を2〜3時間ずらせば影響を避けられることが多いです。
しかし、セントジョーンズワートのように薬の「分解(代謝)」に影響するタイプは、時間をずらしても全く意味がありません。
自己判断は絶対にNGです。
Q. 「天然成分100%」なら薬と併用しても安全?
A. まったく安全ではありません!
「自然由来=安全」は、最も危険な思い込みの一つです。
今回ご紹介したセントジョーンズワートも、グレープフルーツも、すべて天然の植物由来。
天然成分だからこそ、未知の相互作用が起こる可能性もあります。
「天然」という言葉に惑わされないでください。
Q. 家族が危ない飲み方をしてる…どう伝えればいい?
A. 感情的に否定せず、この記事をそっと見せてあげてください。
「そんな飲み方やめなよ!」と頭ごなしに言うと、相手も意地になってしまうもの。
「私も知らなかったんだけど、こんな記事があってさ…」と、第三者の情報として共有するのがおすすめです。
そして、「今度、薬剤師さんに一緒に聞きに行ってみない?」と優しく誘ってあげてください。
緊急指令!もしNGな組み合わせで飲んでしまった時の対処法

万が一、危険な組み合わせで飲んでしまったことに気づいても、まずは慌てないでください。
- まずは体調を確認
めまい、ふらつき、吐き気、発疹、動悸など、いつもと違う症状がないか確認します。
- 異常があればすぐに医療機関へ
明らかに体調がおかしい場合は、迷わずにかかりつけの医師に連絡するか、救急相談(#7119など)に電話してください。
- 症状がなくても自己判断で続けない
今は症状がなくても、これから影響が出る可能性もあります。
気づいた時点で、原因となったサプリメントの服用は一旦中止し、次の受診日や薬局に行く際に、必ず医師・薬剤師に伝えてください。
まとめ 自己判断はストップ!「お薬手帳」と「サプリの現物」を持って薬剤師に相談しよう!

サプリメントと薬の飲み合わせ、その重要性と危険な関係をご理解いただけたでしょうか?
・ サプリは薬の効果を強めたり弱めたり、副作用のリスクを高めることがある。
・ 特にワーファリン、血圧の薬などと、セントジョーンズワートやビタミンKの組み合わせは超危険!
・ 「時間をずらす」「天然成分」は安全の保証にならない。自己判断は絶対にNG!
健康のために始めたサプリが、あなたの健康を脅かす凶器に変わってしまうことほど、悲しいことはありません。
少しでも不安に思ったら、必ず「お薬手帳」と、できれば飲んでいる「サプリメントの現物やパッケージ」を持って、お近くの薬局の薬剤師にご相談ください。
私たち薬剤師は、あなたの健康を守る最後の砦です。
いつでも、どんな些細なことでも、あなたからのご相談を心からお待ちしています!